映画「ブルース・ブラザース」の感想

昔から「笑う門には福来たる」と言われるが、実際に“笑い”で身体の免疫力がアップすることが近年になって分かってきた。笑った時にガン細胞を攻撃するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が活性化し、ガンの予防と治療の効果がある、血糖値を下げるので糖尿病の治療にも有効である、モルヒネの6倍以上という強力な鎮痛作用を持つ神経伝達物質が増加し、ストレスや血圧が下がるなどが報告されている。まさに「笑いは副作用のない良薬」である。一方、音楽の力も馬鹿に出来ない。好みの音楽を聴いた後では、聴いていない状態よりもウイルス感染細胞が平均約40%も減少し、一度聴くだけで24時間以上も効果が持続するという。その意味では、爆笑ギャグがふんだんに盛り込まれ、ゴキゲンな音楽に溢れた映画『ブルース・ブラザーズ』は、究極の“医者いらず”ムービーと言えるだろう。

主人公は黒い帽子、黒いスーツ、黒いネクタイ、黒い靴、どんな時でもサングラスを外さないジェイク(ジョン・ベルーシ)とエルウッド(ダン・エイクロイド)の兄弟、ブルース・ブラザーズ。2人は自分達を育ててくれた孤児院が、5000ドルの税金を払えずに立ち退き寸前にあることを知る。期限は11日、工面の方法を模索するなか、教会で「バンドを作れ」という神の啓示を受け、2人はかつて組んでいたバンドを再結成し、コンサートの収益で孤児院を救おうと決意する。バンド仲間の主要メンバーは、既に堅気の職に就いていたが、「俺たちは神の使徒だ」「お前には聖職の一端を担って貰う」と、最初は説得、無理なら実力行使をして引き入れる。紆余曲折を経て、納税期限の前夜になんとかコンサートを実現させた彼ら。いざ税務署へ!ところが、彼らはここまでの過程で道路違反を重ねており、イリノイ州のパトカー軍団の大追跡を受けることになる。2人の愛車は中古のパトカー。「サツの車だ。エンジンが違う。サツのタイヤにサツのサスペンション、公害対策前の仕様だからレギュラーでよく走る」と、フルアクセルで逃亡。ネオナチ極右団体(アメリ社会主義白人党)に喧嘩を売ったことで連中からも命を狙われ、因縁のある他のバンドからも追われ、元彼女からもバズーカ砲を撃たれるという大騒ぎになっていく。

まだCGが普及する前の映画であり、アクション・シーンでは本当に車をシカゴ上空からヘリで落下させたり、廃墟のショッピング・モールに140店舗を復元させてぶっ壊したり、土日の早朝にシカゴ中の道路を封鎖してパトカー34台で暴走するなど(最高160キロ)、呆れ返るほど大スケール。デイリー・プラザのクライマックスで登場した車両やエキストラ、小道具は、州警察のパトカーが60台、市警のパトカーが42台、救急車17台、警備員150人、市警60人、350丁の銃と150本の警棒、4台の装甲車と3機のヘリ、その他トータル400人の軍隊!映画史上類を見ない大規模なカー・クラッシュが出てくるけど、この映画では誰一人死なないし、ケガさえしないのがまた良い。ジェームズ・ブラウンアレサ・フランクリンレイ・チャールズら大物ミュージシャンが歌いまくるほか、後半に若きスピルバーグがチョイ役で登場するなど、古今例がないほどの痛快娯楽作品だ。残念ながら公開の2年後にベルーシがドラッグ中毒のため33歳で早逝。様々な意味でハリウッドの伝説的映画となった。
この作品は自分にとって映画ファンになるきっかけとなった記念すべき1本ッス!忘れもしない、1982年9月6日。リバイバル上映されたこの映画を、今はなき大阪キタの大毎地下劇場で観た自分は、興奮が沸点に達したまま劇場の外に出た。当時中学2年の自分は半分不登校状態で生きる気ナッシングだったが、“世の中にこんな面白いものがあるのなら、この世界は生きるに値する”そう実感したんだ!